執事と共に賭け事を。
「大丈夫、ですか」


少女のそばに寄り添うのは、きちんとスーツを身に纏った青年だった。

端正な顔を縁取る髪はきちんと整えられて、目は鋭くも心配の色を湛えながら少女を見つめていた。


「もう、なんとかしなさいよ」

「流石に、お嬢様の船酔いばかりは、私ではどうすることも」


お嬢様と呼ばれた恵理夜は、通らないわがままに顔を伏せた。

恵理夜を悩ます浮遊感の正体は、船酔いだった。
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