執事と共に賭け事を。
「申し訳、ございません」


春樹の、動揺した目。


「春樹?」


恵理夜の声掛けにも答えず、春樹は黙って銀食器を拾い集めた。


「新しいものと、交換していただきましょう」

すると、音を聞きつけた給仕のものが新しい銀食器を用意し直していた。

春樹は拾い集めた銀食器を手渡し、謝罪と礼の言葉を述べていた。


「大丈夫?」

「ええ、ご心配には及びません」


春樹は、口角だけを持ち上げてそう答えた。

しかし、その目は恵理夜ではなくその先のツバキの背中に向けられていた。
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