執事と共に賭け事を。
「実は、私は私で外せない用事が入ってしまって」

「でも……」

「いつもなら、恵美子姉さんが行くところだったんだ。男二人だと外聞が悪いからね」


恵美子姉さん――恵理夜の母親を示している。


「あれが死んでから、随分そういう場には顔を出しちゃいねぇからな」


祖父が、遠い目をする。

――恵理夜の両親は、すでに亡くなっているからだ。


「今年の夏休みも、どこかに連れて行ってあげることが出来るかもわからないし。私の代わりに楽しんできてくれないだろうか」


シラヤナギの優しい顔。

祖父の遠い目を見て、恵理夜は一つ息をついた。


「……わかりました」

「わしと、行ってくれるか」

「私で、よかったら」


こうして、恵理夜の夏の終わりの思い出は、豪華客船の旅になることが決まった。
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