お願い、抱きしめて
君の温もり
──分厚い本ばっか読んで楽しい?
──楽しいよ。胸がいっぱいになるの。音也くんも読んでみて
──絶対ヤダ。面倒くさいし
──…なら仕方ないね
◆◇
「──や、 音也!」
「うっ、わあっ…!」
「午前の授業終わったぞ。お前、寝過ぎ」
甘酸っぱい初恋の夢から一転。現実世界に引き戻され、ガバッと起き上がるとオレを覗き込むように和真(カズマ)が前の席に座ってた。
えっといつから寝てたんだっけ。しかも過去の事が夢にまで…。記憶、がない…。いや、待て待て。思い出すんだ!
眠った脳を動かそうと、何度記憶を巡っても蘇るのは昨日の事ばかり。菜子さんの顔しか浮かばなくて…。
あの、甘ったるい声が耳の奥に今も残っては脳内を刺激する。