恋色語
「…嫌だ」

「だから来るなよ!」


もう一歩だけ歩み寄る。何て言われようが構わない。片桐を放っておけないから。


「嫌だ」

「何でだよ!?」

「何ででも」


また一歩と、確実に近づいてゆく。あともう少し。


「お前本当は分かってねえだろ」

「分かってるよ」


それ以上自分を追い込まないで。世界で一人きりにならないで。
もう…私は理解してるから。なぜだろう。放ってなんかおけない。

そうして、片桐と背中合わせに座った。


「分かってるよ…片桐の事。
でも私は旭 渚であって、絢香さんとは違う。
でもね、私は片桐の味方だよ」

「味方って…何だよ。何の意味があるんだよ」

「みんながあなたを責めても、私は絶対否定するってこと。うん…じゃあさ、私のことたくさん見てよ」


多分訳が分からないって顔してると思う。
だって私を見ると胸が苦しくなるもんね。言ってること無茶苦茶だもんね。


「論外。お前アホだろ」

「ううん。…もうアホでも何でもいいよ。だってそうしないと片桐に近づけないんだもん。

もう一回言うよ?私は旭 渚」
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