やさしい手のひら・前編【完結】
「はい」

「亜美?」

大好きな凌の声。この声を聞くだけで鼻がツーンとなり、泣きそうになる

「うん。なに?」

「どうしてるかなって思って…」

「…」

何も言えない。ほんとは問い詰めたくて仕方がない。でも言ってしまったら私達は終わりになるだろう

「どこにいる?」

「海」

「海?誰と?」

私は男と、でも言ってやりたかったが

「由里と…」

「去年行った?」

「そうだけど」

思い出してほしい
去年の8月、
この海で言ったことを・・・
私を大事にするって言ったことを…

「亜美ごめん。連絡しなくて。亜美のこと忘れてた訳じゃないから。いろいろ用事あって」

凌は私に用事と言って嘘をついた
女のことを隠した
やましいことがあるからきっと言えないんだ

「そうなんだ」

「明日、いつもの場所で待ってる。だから今まで通り学校に行こう。帰りもな」

凌は普通でいられるんだね

「うん、わかった」

「あとで帰り迎えに行くからバス亭に着いたら連絡して」

「わかった」

私から一方的に切った

「なんだって?」

由里が聞いた



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