悲しいライオン
驚いたのは雄ライオンも同じです。
いつも遠くで見ていたあの美しい雌ライオンが、すぐ手の届く所にいるのです。

水に濡れたその体は、月明かりに照らされて神々しいほどの輝きを放ち、雄ライオンの心を捉えて放しませんでした。


「待って!!」

雄ライオンは、茂みの外から叫びます。

「お願いだ! 逃げないで。
頼むから、ここにいてくれ。」


雌ライオンは、初めて聞く雄ライオンの声に胸が震えました。

(何て雄々しい声なの・・・。
ああ、どうしてこんなに体が・・・熱いの・・・。)

< 4 / 35 >

この作品をシェア

pagetop