宵闇の世界 -world of twilight-
「スラスト…麗藍の様子はどうですか?」

「このままだと危険だ」

「腕以外に傷が!?」


スラストの言葉に、辰樹は椅子から立ち上がって問いかけた。
辰樹の姿を見た後、スラストは目をつぶって首を横に振った。
傷がないことに辰樹は安堵したが、すぐに別の不安が襲った。
傷ではないが、危険な状態ということに。


「必要量に足りていない…ということですか…」

「ああ、『死の雨』を放った上に、蒼維に力を与えている。ぎりぎり生きていられる段階だな」

「『死の雨』!?今まで一度も使ったことがないですよね…」

「ああ…」


辰樹は力なく椅子に座り、ただスラストと捺瀬の会話に耳を傾けていた。
意味はわからないが、麗藍が今まで遣ったことのない技を使ったことだけはかろうじて理解できた。


「血からの力の補充は無理ですね…麗藍が気を失ってしまっては…」

「麗藍の同意を得ないまま、あの方法は使いたくはなかったのだがな」

「そんなことを言ってられません!!麗藍ならわかってくれます」

「…そうだな」

「私は麗藍がいなくなるのは望みません。それはスラストも一緒のはずです」

「ああ、麗藍は大切な人だ。いなくなどさせるか」


スラストの目には、絶対に麗藍を助けると決意に満ちていた。
捺瀬は信頼の眼差しでスラストを見ていた。
麗藍を助けられるのは、スラストしかいないようだ。
辰樹はスラストをただ見つめていた。


「今夜は新月だ。我の力が最も活性化する。問題はいらない」

「まず一息ついてはどうですか?今すぐに危ないわけではないですよね?」

「もちろんだ」


スラストは小さく微笑むと、辰樹の傍にあった椅子へと座った。
テーブルの上の紅茶を手にし、ゆっくりと口にした。
辰樹は闇に包まれた窓の外へと、視線を移した。
新月というだけあって、外の景色は何も見えなかった。
ただ自分の置かれている状況のわりに、不安などはあるものの比較的に落ち着いていた。
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