宵闇の世界 -world of twilight-

テーブルの上にはすでに食事が用意されており、いい香りに辰樹はいまさらながらおなかが空いていたことに気づく。
スラストと捺瀬に動作で促されるまま、先ほどの椅子へと座った。


「サイズは間違っていないようでよかった。そちらのほうがここでは違和感ないだろう」

「似合ってますよ」

「スラスト、捺瀬…ありがとう…でもいいのか？」

「問題ない」

「食事にしましょう。おかわりありますから、遠慮しないでくださいね」


捺瀬の言葉に三人で顔を見合わせ、食事を食べ始める。
トマトソースのパスタ、まだ温かいバターの香るパン、新鮮な野菜を使ったサラダ、コンソメのスープ。
そのどれもが優しい味がして、とてもおいしかった。
辰樹はパスタとスープのおかわりをもらい、捺瀬の入れてくれた食後のコーヒーをスラストと飲んでいた。
捺瀬はキッチンで洗い物をしている。


「それを飲み終えたら、体を休めるといい。寝れるかわからんが体を横にするだけでも疲れはとれる」

「ん…いろいろありがとう。でもどうしてここまで？」

「我、麗藍、捺瀬、黒羽、蒼維は辰樹のようにここに来た者を保護している。そしてその原因を調べている。詳しくは明日教えるが…」

「そっか。スラスト達は俺や捺瀬みたいにこの世界に来た人を、元に戻そうともしてるのか？」

「ああ、原因がわかれば戻す方法も見つかる。あとは、明日だな」


スラストがそう言ってコーヒーを一口飲むと、捺瀬が戻ってきて椅子へと座った。
スラストは捺瀬に視線を移し、小さく微笑んだ。
捺瀬もそれに答えるように優しく微笑む。
二人の雰囲気はとてもよく、見ていて心が温まるのを辰樹は感じた。


「捺瀬、辰樹、ゆっくり休め」

「麗藍のこと…お願いしますね」


立ち上がったスラストに、捺瀬は心配そうに告げる。
スラストは深く頷いた。
椅子から立ち上がった捺瀬は小さなテーブルの上においてあった服をスラストに手渡した。
白いワンピースらしきものと、空のような青のストールらしきもの。
畳まれていたので、憶測でしかなかった。
スラストは奥のドアへと消えていった。
スラストを見送った捺瀬と辰樹は、少し冷めたコーヒーを飲み干した。