宵闇の世界 -world of twilight-
「それがいつまでもつかねえ」


クツクツを笑い、男は一気に辰樹との距離を縮めた。
無条件に構えた刀は、男の持つ漆黒の剣を受け止めていた。
しかし、その均衡はいつでも崩れそうだった。
男の力の方が、辰樹の力よりも上だったからだ。


「ヤバイ!!『Thunderbolt』」


男性の声が聞こえ、その瞬間男を目掛けて雷電が落ちた。
男は雷電の少し前に辰樹から離れたため、辰樹の目の前に雷電が落ちただけだった。
しかし、その音に男はしばらくの間動かなかった。
その間に辰樹の前には二人の男性と一人の女性が立っていた。
黒羽、スラスト、麗藍の三人だった。
辰樹の前に麗藍、麗藍の前に黒羽、スラストという立ち位置だった。


「大丈夫?」

「え、あ、うん」

「お前ら何故邪魔をする…」

「『時空の迷子』を保護する。それだけだ」

「ククク、ばからしい」


スラストの言葉に、男はまた滑稽だといわんばかりの笑みを浮かべた。
麗藍は呆れたようにため息をついて、スラストと黒羽の前に出た。


「「麗藍!?」」


スラストと黒羽の少し焦ったような声が聞こえる。
麗藍は少しだけ後ろを振り返り、小さく微笑んだ。
その微笑にスラストと黒羽はグッと思いとどまったように、一歩下がった。
辰樹は状況が把握できないまま、ただその光景を見ていた。
ただ、麗藍とスラストと黒羽が、自分を助けてくれたというその事実だけは理解できた。


「変わらないやつは、嫌い」

「ああ!?」

「充分に猶予はあげた。それでも変わらなかったお前が悪い」

「!!!お前は!!!」

「さよなら…『Pioggia della morte』」

「うわああああああああああああああああああ」


麗藍は小さな剣を空に向けた後、男に向かって剣を向けた。
空中から男に向かって斜めに黒い雨が降り注ぐ。
その黒い雨は鋭い刃物となり、男の体中に突き刺さる。
辰樹はその光景に目をそらす。
男は音もなく地面に崩れ落ち、その体は塵になった。


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