閃火高遠乱舞


 激しい撃ち込みが続く。
衝撃音が辺りを裂き、凄まじい重圧が腕を襲う。
細い癖して何て力だ、と宝王子は舌打ちする。
「おら、どうした!?スピードが落ちてるぜ!!」
「はっ、そういうアンタこそ!!」
 素早い連撃に、対応するのが精一杯だ。
その上力もあり目もいい。
動きだってかなり軽い。
最年少記録を更新した手腕は本物だ。
 ふと、背後が騒がしくなりはじめる。
新川がようやく到着したらしい。
一目散に向かってくる。
 しかし。
「遅かったな~アル!」
 アメリカ側からも援軍が到着。
しかも、率いているのはアルベルトである。
 シーザーは剣を押し合ったまま、軽く声をかける。
こっちは精一杯だと言うのに、まだまだ余裕があるらしい。
それを知って腹立たしく思いながらも、自分の実力のなさが悔しくてたまらない。
「王子、避けろ!!」
 新川の声が宝王子の思考を破る。
それと同時に反射で身体を翻した彼の、もといた場所を何かが走っていくのが見えた。
「雷刃走!!」
 雷が地面を割る勢いで走っていく。
黄金色のそれはかなりの熱量なのだろう、火花が草を焦がしていく。
「ひ…っ!!」
それを目の当たりにしたアメリカ軍は息を呑み、黒焦げの己を想像した。
間違いなく死ぬ。
 だが、その雷の動きがぴたりと停止した。
「アル!!」
 シーザーが歓喜の声を上げる。
先にはアルベルトの騎乗した姿。
横目でよくは見えないが、彼が雷を止めたのは悟れた。
「俺らはなぁ、『紋章』の所有者なんだよ!!」
「もん、しょう…?」
「日本人はこーゆーのを『百聞は一見に如かず』って言うんだろ?」
 ニイッと口元に笑みを浮かべたシーザーが、ガキンッと押し合いを続けていた剣で宝王子を弾き飛ばす。
「おどる火炎!!」
 ゴオッ
 凄まじい勢いの炎が宝王子の周りに立ち上る。
まるで火炎の柱だ。
『桃花千本桜』の炎などとは比べものにならない。
「レオン、俺の馬」
「はい」
 視界を塞がれた奥で、飄々としたシーザーの話し声が聞こえる。
レオン、とは恐らく彼の副官だろう。
 風でざあっと炎の幕が流れる。
ようやく捕らえたシーザーは、すでに騎乗していた。



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