閃火高遠乱舞

「なかなか楽しかったぜ?次会うときまでに腕を磨くんだな」
 ニヤリと笑うシーザーを殴りたいと思った。
だが、力量の差は明らか。
避けられるだけならまだいい、反撃されれば骨の一二本覚悟しなければならなくなる。
「アル!!」
「ああ」
 シーザーに声をかけられた彼は、表情を変えることなく頷く。
シーザーが緋色の髪だからか、彼の銀髪は酷く薄く見える。
 遠目でよくは解らない。
しかし体格はいい。
切れ長の瞳はアイス・ブルーで、冷たい印象を受ける。
表情はほとんどなく、淡々としていた。
 アルベルトの前では未だバチバチと雷がぶつかっている。
「疾走する雷撃」
 新川の雷を止めている技もまた、「紋章」だった。
相殺していたそれは、しかし徐々にアルベルトが勝り始める。
「ふんっ」
 そしてそれは、呼吸一つで空へと流された。
青へとそれが溶け込んだのを見送ると、二人はこちらに馬を向けた。
「アメリカには『紋章』使いは二人しかいねぇ。俺らだけだ」
「シーザー!!」
「いいじゃねーか。別に『言うな』なんて命令受けてねーもん」
 アルベルトに叱られるシーザーは、まるで童のようだ。
これで宝王子以上の実力者だなど、信じまい。
この目で見た以上、そんな戯れ事は口にしないが。
「じゃーな~!!」
 敵ながら恨めないキャラである。
だからこそ、士気も高かったのだろう。
 二人はあっさりと背を向け、日本から出て行った。








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