閃火高遠乱舞



 アメリカ軍はそのまま侵略できたであろうに、何もせず去っていった。
不信感が募る中、おそらく皇王の勅命ではなかったのだろうという判断が下される。
皇王の命令ならば、残虐な結末になっていたに違いない。
となれば、今回はアダリーやトロイが、本当に実力を見るためだけに派遣した、ということになる。
 さて、何とか国土侵略の危機を乗り越えた日本軍は、己の未熟さを痛感し、より厳しい鍛練に勤しんでいた。
中でも宝王子は病ばりに鍛練を繰り返し、肉体を虐め抜いている。
夜が更けるまで鍛練し、室で爆睡するという生活を送っていた。
 宝王子は目の前でシーザーの実力を見ている。
相手もした。
全く敵わなかったことは実感している。
こうして生きているだけ、奇跡とさえ思っている。
 秋と言えば普通は戦をしない時期だ。
収穫する田畑を荒らすようなことはしたくはない。
休息と我慢の季節なのだ。
 そのため、比較的のんびり穏やかに時は過ぎていく。
しかし、今年の九月はいつもと異なっていた。




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