閃火高遠乱舞


 その事件は九月の中頃に起きた。
 夜中にけたたましい警報の音が轟く。
赤いランプが廊下を照らし、ただならぬ雰囲気である。
 跳び起きた宝王子は、すぐさま何事かと刀を手にして自室を飛び出した。
駆けてきた柳と泉を従えて向かうは、執務室。
執務室は帝が時間の大半を過ごす場所だ。
そのため、セキュリティはかなりのハイレベルとなっている。
将軍でも大山はノンタッチだが、宝王子や新川すらもパスがいる。
林や山代は、呼び出しや許可がなければ入ることはできない。
 宝王子は急いでポケットからパスのカードを取り出す。
薄いそのプレートを扉の横に設置されている機械に通し、しばらくして暗証番号を聞かれる。
兵一人ひとりに割り当てられたナンバーだ。
それを入力して、ようやく扉は開く。
もちろん入力は、指紋検証も兼ねている。
 扉をくぐり暫く廊下を行けば、執務室だ。
 執務室には新川と大山がすでに到着していた。
入口は二人が連れて来たのか、兵たちが武器を構えている。
 敵が侵入したのか。
 宝王子はそう思って、すぐさま抜刀する。
柳と泉も武器を手にし、そこに駆け寄った。
 しかし、刃を向けるその先の見知った姿に、宝王子は驚いてしまった。

「や、山代…?」

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