閃火高遠乱舞
「……で?俺に何をしろって?」
「スペイン内部でも武力派閥はまだ根強い。それを煽るために、ドイツにいてもらう」
「悪く言えば、『人質』ってことね」
「否定はせんな」
 グウェンダルは表情ひとつ変えることなく肯定する。腹を全く見せない。軍師として必須のスキルだが、彼ほど完璧にやってのける人物も、ちょっといないのではないだろうか。
「あっそ…まぁ、どうせベルリンも行くつもりだったし、奢ってもらったと思うことにするか」
 シーナはあっけらかんと言い放つと、グウェンダルとの間にある大きな木調のテーブルに近付く。そこには、同じく巨大な地図が広げられていた。パソコンの画面は、三次元の立体地図が映っているのが見える。
「日本か…」
「分かるか」
「日本は三年ぐらいいたっけか…」
 ぽつりと呟くと同時に、鮮やかに流れる四季の輝きが脳裏をよぎる。なかなかいい旅だった。
そんなシーナを黙って見ていたグウェンダルは、顔を地図に戻す。



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