閃火高遠乱舞
「俺の部下を紹介しよう。信用できるやつらだ、安心していい」
 そう言うと同時に、扉が開く。そこからは、明らかに双子と分かる二人の青年が姿を見せた。
「えっとー…ライザ・エリシュールと」
「ライズ・エリシュールです」
 語尾を伸ばすな、と注意されたライザは見るからに肉体派の軍人だ。逆に、ライズは完璧に文官だろう。見目はそっくりな割に、受ける印象が全く異なる。
 黒の髪を短くしているライザは、機動性重視なのか露出が高い恰好をしている。長い髪を適当に結っているライズは、白衣姿だ。
「シーナ殿下だ。しばらくここに滞在することになった。頼んだぞ」
「了解!!」
「お任せ下さい」
 二人の返答を聞き流しながら、シーナは面倒事に巻き込まれたことを悔やんでいた。しかし、グウェンダルの手から逃げられる気が全然しないのもまた事実だ。
 とすれば。
「まぁ、よろしく?」
 一人尖んがっていても有利になることはない。シーナは腹を括って、半ば自棄で笑顔を作った。
 城内を案内してくれるとのことで部屋から出ようとしたとき、シーナは思い出したかのようにグウェンダルに声をかける。
「そうそう、滞在することになんなら一応言っとく」
「…何だ?」
「兄貴に気をつけろよ」
「……どういう意味だ、それは」
「そのまんま。…兄貴、何か考えてるぜ」
 シーナの言葉は、後々の予言となってしまう。そのことを知るのは、2141年初春のことだ。


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