閃火高遠乱舞
 相手は北朝鮮。
日本との関係は向上することなく、悪化する一方だ。
それだけでなく、北朝鮮は他国とは異なり、大戦前から戦力を蓄えてきた国。
今更攻撃を躊躇うことはない。
 そんな北朝鮮に狙われている、という報せに将軍たちは騒然する。
しかし、それに動揺の色は少ない。
 とっくの昔、軍に入ったときから、戦い抜く、という覚悟をしてきていた。

「…本土での戦闘は避けねばならない。国土に侵略される前に、こちらから出向くぞ」


 文官の中でも、最も帝に親しい存在。
代々軍帝に仕えてきた「聖徳家」の長男であり、現在「聖徳」の名を継いでいる男が報告を受けての考えを告げる。
 考えとは言えど、ほぼ決定している。
彼に意見できるのは、軍帝のみだ。
しかし、彼は昨夜、この聖徳と話をまとめている。
聖徳の言葉は帝の言葉としてもいいだろう。

「敵に悟られる前に出立したい。勿論、奴らが出立する前でなくてはならん」

「侵入者や情報隠蔽は我々が」

 先程報告書を読み上げた少女――諜報部隊「風神」の武将・大山司が進言する。
彼女が率いる風神は、「情報」を総合的に扱う部隊。
忍びを中心に構成されている。

「任せよう。…他の部隊は出立の支度を。今週中にでも出向くぞ」

 その帝の言葉で、その場は解散となった。

< 5 / 95 >

この作品をシェア

pagetop