閃火高遠乱舞
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爽やかな蒼天が永久を思わせるような広大さで、果てなく続く。
周囲の緑は今が盛りとばかりに、瑞々しく水滴を落とす。
砂煙を巻き上げる風は熱を含んでおり、来たる夏の近さを告げていた。
北朝鮮に来ていた。
見慣れない北朝鮮の大地を踏み締め、感触を味わう。
辺りは隊員が慌ただしく走り回り、戦支度をしているのが見える。
陸軍「疾風」を率いる宝王子神楽は、ぐるりと辺りを見回した。
目の前にある宿舎は「風神」のものだ。
気配を消すのを得意とするここの隊員は、戦闘中、通信機能付きのマップを逐一更新させるために、戦場を動き回るのを役目としている。
その体力は普通ではない。
そこから少し離れた北西部に、真っ黒なテント群がある。
五芒星を掲げ、篝火を焚いていた。
林雪が率いている特殊部隊「漆黒」である。
中央には、軍帝の本陣があった。
そこまで確認した宝王子は、自軍のある右翼へと足を進める。
そろそろ自分も戦の用意をしなくてはならない頃合いだ。
さらに、彼がいるのといないのとでは、やはり隊員の動きが全く違う。
士気もまた、大幅に異なるのだ。
宝王子はまず、剣や槍の調度品を見る。
数・種類・強度・出来を確かめ、部下の報告に耳を傾ける。
そのあとで陸軍の「足」とも言える軍馬。
黒馬や白馬を見ては、体調を伺う。
そうして彼は、ゆっくりと丁寧に調整していった。
空は青天から、少しずつ茜色に染まっていった。
太陽は西に傾き、明星も東の方角から顔を覗かせて淡い光を湛えている。
初陣の開幕が、迫ってきていた――