閃火高遠乱舞
さて、その頃宝王子はライザ相手に苦戦を強いられていた。
ライザに獲物はない。全て拳や脚で攻め、身体能力で避けている。そんな相手は何の小細工もない。ただ、本当に強いだけだ。
ライザは以前戦ったアメリカのシーザーと戦闘スタイルが似ている。しかし、シーザーは素手も剣も強いばかりか、「紋章」まで所有していた。変な術が使えないライザのほうが、宝王子としては都合がいい。
「『桃花千本桜』火炎舞!」
交わった刃の摩擦で、ごおっと炎が沸き起こる。その火炎はライザの拳を焼く勢いで大きく揺らいだ。
「チィ…っ!!」
やけどを負ったライザは舌打ちし、仕方ないと身を翻す。宝王子はそれを追うことなく、素直に帝の指示を仰いだ。
「新川達が苦戦している。大山は情報妨害を受けて動けない…向ってくれ」
「わかりました、すぐ行きます!」
情報妨害をしているのは、先ほど闘っていたライザの弟ライズの仕業と知るのはしばらくしてからのこと。
宝王子は急いで馬を駆り、裏側へと回った。