閃火高遠乱舞



 荒野が見える。砂煙が起こっていて、前を窺うのは困難だ。白い建物が建っているが明かりもなく、棄てられた城のようだ。城門は鎖で巻かれ、通路は城門横の細い通路のみ。この通路は監視員用らしいが、もちろんもう誰もいない。
 中は埃が被っていた。所々に生えた苔が、古城の歴史を語っている。唯一の利点は、人が使っていなかったためクモの巣がかかっていないことか。中に入る者はみな馬や上靴のままなため、特に問題はない。
「来ます、北朝鮮です!!」
「我々の目的は国家首席である『将軍』金一族の抹殺!一人も残すな!!」
 大山の声が流れると、聖徳の命が下りる。帝と聖徳は城の上で、全貌を把握するのに努めている。林は南門、大山は東門、新川は西門で陣を敷いているはずだ。
 宝王子はふっと息をはいた。双眸を真っすぐ前方に向け、馬の手綱を取る。帝の乗る、赤毛馬の息子を譲り受けたのだ。宝王子はそれに跨りながら、後ろにいる騎馬隊を見た。
「行くぜ!!」
 喚声が上がる。それを背に、駈け出した。


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