閃火高遠乱舞
 宝王子・新川の「考えるのが苦手」なペアーは、暗天星華について考えるのを放棄して体力づくりに励む。グラウンドや街中を何キロも走っている。その後、二人で組み手をする。宝王子と新川の組み手は尋常でないほど続く。パワーとスピード、甲乙つけがたいほどのレベルなのだ。
 一方大山と林は、暗天星華を利用した攻撃を考えていた。熱心にトレーニングセンターにこもり、何時間も費やしている。頑固さを知っている帝は、何も言うことなく好きにさせていた。
 帝と聖徳は執務室で策を話し合う。まず、北朝鮮の首都までどうやって行くか。将軍をどう配置し、進軍するか。そのとき敵はどう動き、予想される被害はどの程度か。最後に、必要な軍事費の見積もり。こまごまと電卓を叩き、筆を走らせ、資料を漁る。今の執務室周辺は、従者ですらも入室不可のトップシークレットとなっていた。キーを叩くアップテンポな音と筆が動く音、紙が擦れる音しかしない。ひどく緊迫し、重苦しい空気だ。新川などが入ったら、回れ右をして全力で去るだろう。
 各々が、それぞれに今すべきこと。それを一生懸命に考え、行動に移している。だが、その根底は同じ。これは兵卒たちにも言える。
 世界に平和を、生活者に安堵を。全責務を負う帝を、少しでも楽にしてあげたいと。そのために辛い戦いを乗り越え、こうして居るのだ。
 青く澄んだ空が広がる中で、雲がゆっくりと流れていく。風が静かに脇を通り、木や花を揺らす。日光にさらされて、砂が輝いた。
「北朝鮮までは飛行艦で行く。そのまま直接首都を襲撃するぞ」
「北朝鮮を堕とすぞ!!」
 聖徳はが高く叫んだ。天には熱く燃える真っ赤な太陽。その周囲には、今は見えなくとも、いつでも星が集っている。兵たちが大きく雄叫びをあげた。
 帝の鋭い声が、喚声を裂く。
「出艦!!」





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