閃火高遠乱舞
「これは…?」
「イタリアの地図…だよな」
 見せられたのは、イタリア全域を表した地図だった。精巧に描かれている。国家レベルの中でも、最上の代物だろう。
 宝王子と新川が地図に見入っていると、ミカエルが意図を説明した。
「イタリアは今回の戦争に積極参戦していない。内部も教皇の影響で、穏やかな国だ」
「ここに同盟協力を要請して頂きたいんですー」
 イタリアにはヴァチカンがある。教皇が住まうそこは、キリスト教徒のメッカと言っても過言ではない。つまり、イタリアはアメリカや中国も下手に手だしできない聖地なのだ。穏やかでありながらも絶対に安全なここを同盟下に置ければ、日本の状況も圧倒的によくなる。しかし、なぜフランスがこの話を持ってきたのか。謎は深まるばかりだった。
「…なぜこの話を我々に?」
 帝が臆することなく尋ねる。フランスの三人もそれに対して、気持のよさを感じる。
「私が国王になった暁には、日本と同盟を結びたいと考えている。しかし、周囲の仲間がスペインのみではすぐにヨーロッパに叩かれてしまう。だから、一番可能性のあるイタリアを…ということだ」
「それは本当ですか!?フランスが仲間に、って…!!」
 フランスには騎士団がある。志高く意思が強く、清廉な誇りを持つ騎士団を。騎馬戦には滅法強い軍隊だ。地上戦では頼りになる。
「ああ」
 トウヤは頷いて肯定する。日本の辛い立場をきちんと理解しながらも、協力すると決めたのだと言う。その言葉に、自然と宝王子の闘志に火がつく。
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