閃火高遠乱舞

 翌日も清々しい青空が広がった。言うならば昨日より少々気温が低いようだが、気にするほどでもない。
クラウディオは噴水を眺めていた。高台のようになっている廊下の肘掛けに手をつきつつ、、昨日のことを思っては一人不機嫌になる。
 そんな所に、道に迷った宝王子と新川が現れる。彼らを見て、クラウディオの機嫌はさらに急降下した。
「あ!えーと…クラウディオさん」
 宝王子が「助かった!!」と言わんばかりに満面の笑みを浮かべて近づく。新川はそんな宝王子に大人しく従う。
 だが、クラウディオはその様子に眼光を鋭くした。
「日本の将が何の用だ?」
 棘のある口調で先制パンチを食らった宝王子は、道を教えてほしいとも言えず、なぜ怒っているのかも聞けない。「まいったな」と宝王子は新川に視線を移した。
 すると何を思ったか、新川はまじまじと見ながらクラウディオの腕を掴んだ。
「――っ、触るな!!」
 クラウディオが思いきり腕を振り新川の腕が離れた、その瞬間。
 ポチャン
 目の前にあった噴水に、クラウディオの腕についていたブレスレットが音をたてて落下する。それを冷淡に眺めたクラウディオが(後で誰かに捜させるか…)と考える横で、新川は首から下げていた入城許可証を放り投げた。それを宝王子が巧くキャッチする。
「お、おい新川…?お前、まさか……」
「…?」
 嫌な予感しかせず焦りダラダラ冷汗を流す宝王子に、新川はいつものように能天気な笑顔を向けた。それに彼は確信する、自分の予感が当たっていることを。
 クラウディオが何をするつもりなのかと思い見ている中で、新川はドボーンと勢いよく噴水に飛び込んだ。
 予想通りの行動に、宝王子は頭を抱える。
 その間にクラウディオが我に返る。そして、行動の意味が分からないと言わんばかりに、声を荒げた。
「――おいっ!私は捜してくれなんて頼んでないぞ!後で他の者に捜させるから、早く上がれ!!」
 そう言っても新川は上がる様子を見せない。
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