閃火高遠乱舞
 残された新川は張られた頬を手で押さえ、ぽつーんと佇む。その間に、女性なんだから少しは気を使えよ、などと考えていた宝王子に大山がこっそりと近づく。ツンッと宝王子の裾を引いて注意を向けると、ぼそぼそ耳打ちする。
「王子、ヤバイよぉ…」
「ヤバイって、何が?」
「新川の好きな女の子のタイプ、どんなんだったか忘れた?」
 続いた林の暗欝な表情を見て、宝王子は数年前の話を思い出す。
「俺はー、まず目が鋭い美人!!ンで、胸より脚かな~♪スレンダーで細い、強き美人v」
当時宝王子は「へぇ…どうでもいいけど」などと返したと記憶している。しかし今は冷や汗を流し、硬い動きで立ち尽くしている新川に視線を移した。震える唇を半ば無理やり開く。
「かなり…ヤバイな……」
 ヤバすぎだ。ストライク・ゾーンど真ん中である。
 宝王子が見た新川の背中からは、「コングラッチュレイション!!」の文字と紙吹雪・ラッパを吹く天使がいるような気がした。冷静だったならば、「いや、妄想だろソレ」と一人突っ込めただろが、今はそんな余裕はない。
「帝…スイマセン。俺、今回ばっかりは流石にダメかも……」
 すべての責務を投げ出して、泣きたくなった宝王子だった。







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