閃火高遠乱舞



 ミカエルは執務室で書類の整理をしていた。現在表だって遠征などの戦争介入をしていないとはいえど、国内部の政務はある。ラブラドールは書類作成に必要な資料を取りに宮殿内王城図書館に行っていて、今はいない。トウヤはやることもなく「暇だ」と呟き、近衛兵用鍛練場へ向かっていった。この部屋にはミカエルしかいない、という状況だった。
 そんな静かな執務室の扉が勢いよく開かれれば、ミカエルでなくとも驚きを隠せないまま振り向く。そこに立っていたのはクラウディオだった。心なしか、頬が紅潮しているように見える。
「クラウディオ…どうした?」
「聞きたいことがある。なぜ今日本への助力を決め、尚且つフランス…いや、私のもとに連れてきた?」
 急なことにミカエルは困惑するが、理由如何によっては日本への同盟締結に賛同してくれるかもしれない。何があったかは後回しにして、ミカエルは話すことにした。
「四大公爵のいる、フランスでなくてはならない」
 四大公爵。フランス国内の東西南北を統べ、今だに宮殿内においても絶大なる地位を持っている。その権力は侯爵とは比較にもならぬ、五等爵の第一階級である。
 騎士団長のガルドルーダス家。
 近衛連隊長のシュトーレン家。
 宰相大臣のヴィクター家。
 そして、現外交総監クラウディオ公のブリュガン家。
 各々がそれぞれ己の執務を全うすることで、フランスという国家が成り立っている。役割が大きければ、力が必要になる。権力が大きいのも当然のことだ。
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