ブラッククロス
王族直属の暗殺部隊…。
王家の剣、バンパイアナイト。






その隊長、片目のバンパイア。
バンドー·ダルテフィス。





元は伯爵だったと噂される謎のバンパイア。






統轄している部隊に別の勢力があるのを知りながら、游がしていた。






それが結果的に風見鶏に出逢ったのだが…。






「さて、どうしたものか…。」






不適な顔は闇に紛れて見えない。






何を考え、何を思うか…。誰にもわからない。






ただ風見鶏の親代わりとなって慈しみを覚えたことは彼には大きかった。
風の存在が…。
今となっては嵐のようだったと…。






あの時感じた…。
洞窟近くのそれはバンパイアの彼さえも全身に電流が走ったようだった。





「嵐の前の静けさか…。生暖かい風が吹いている。」






敏感なバンパイア。
何かを感じていた…。






「庶子といえど、血は王族のもの。血が濃い。貴方は逃げられない運命か…。」






王位継承は今や三つ巴…。





ビックジュエルはその証し。






わかってはいたが…。






やはり面倒だ。
何処にいても同じこと。
何者にも接しない話さないだった。
ひとつを除いて…。






見合った所有物を探すために酒場で遊んでいたがこれといってなく…。
無いよりはましかと…。





「何処に行くの?」






不意に声がした。






「グラス…。」






長身の美しいバンパイア。
月灯りが青白く幻想的に照らしていた。






「クスクスクスクス…。」





「何が可笑しいの?」






やや赤い顔になる。
可愛いな…。






「いや、やはり君は優秀だなと思っただけさ。」





「!」






ほら、耳元まで赤い。






「誉めても無駄です…。」






壁に押し付け、顔を近づけて囁いた。
「監視役だろ?」








怪訝な顔をされる。
「またデートしてよ…。」





「あり得ません…。」






額にキスを落とす。






「ちょっ!ふざけない…。」





体の力が抜けた彼女を抱えて下ろす。






「なっ何をし…。」






「おやすみグラス…。」





そう…。ただの気まぐれさ。






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