ブラッククロス
ノア…。
私は…。





ゆっくりと顔に掛かる髪を払う。





契約した時に…。
私の一部を貴方に渡してしまったの…。





貴方は…。
私も…。
もう離れられない。






廻る運命の輪が…。






それを狂わせたのか…。





魔女と獣は離れてしまう。





獣は内に秘める力故に…。
一輪の薔薇を求めて真っ直ぐ、ただひたすら走り続けた。





魂の片割れ…。






香しい運命の薔薇を求めて。





魔女は去る。願いの為に…。その魂を犠牲にし…。





運命の輪は再び巡り…。その魂を混じり合う。






紅い魂は不滅の魔力…。
その指先は杖を振るように不滅の炎を踊らせる。





再び夕闇に魂を混じり合う。





闇の世界の生き物。






その頂点に君臨するのはバンパイア。





王家の血を継ぐものこそ闇の王。






魔力の頂点にあるのは蒼い炎の中にある秘密の星。





螺旋を描く星形の結晶。





蒼い炎…。ビックジュエルに隠された秘密の薬。





決して生まれることはなかったものが…。その魂を作り出す。





闇の世界の生き物。






人の世には理解できぬ忌むべき存在、忌むべき世界…。それは恐れと戦いを呼んだ…。






炎の中にある秘密の星。
燃える永遠の炎。
不滅の魔力…。
不滅の炎。





闇に紅い輝く星。
それを銀の受け月が守っている。






遺骸の姿が美しくも恐ろしい炎の指揮者。






それは炎のように美しくも恐ろしいバンパイア。




消えることのない不滅の炎。








「私の全てを…。貴方に上げる。ノア…。最後から始めまで…。」






だからどうか…。その魂を…。





私の魂を…。






私は…。漆黒の獣に魅せられ…。
美しくも恐ろしい炎に飛び込んだ。





闇の世界の夜は長くて…。深い…。






私は…。漆黒の獣に捧げられた餌…。






それでも…。






私は…。漆黒のバンパイアを愛してる…。あれは…。あれは。






「私のノアはノアよ。」





魂までも貴方に…。
だって私は…。
貴方に恋して…愛してる。
炎の指揮者に捧げたのは私の心…。






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