ブラッククロス
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「あれ?」
私どうなったの?
モノクロの世界が広がっていた。





遠くで声が聞こえた気がするけど、なんて言ってるのかわからない。





もう…。何処が現実で夢なのかわからない。





誰もいない世界。





歩けば拡がる光の波紋…。





ここは夢との狭間?…。




鼓動が聞こえた。
何か…。這い出て来る気配に振り返る。





何時だったか見た。
あの真っ黒な触手…。
地の底から這い上がって来るような…。





前よりどす黒く見える。
それは…。何かを探していた。





本能的に危ないと警告が体に響いていた。
逃げろと…。
後退りながら此方に気づかないようにと願う。





それは…。
人の形を形成していく。
人の形をしていても瞳はなく…。
這い出て来る姿に吐き気がした。





探し物…。






それは…。器。自分を受け入れることの出来る。
甘い香りのする極上の器。





泥々としたそれは…。四方に触手を伸ばす。
延々と続く…。
このモノクロの世界に。




一切纏わぬ無垢な魂は動けない。





触手が一つ触れようとした瞬間。





パシッ!





銀の光が放たれ、弾き返した!





「ローズ?!何処?」






見渡すも見えない。





小さな十字架を握りしめながら宛もなく走る。






波紋が拡がる。





嘶きが何処からか聞こえた。





淡い赤い光。





「リュビ?」





赤い光。
ただそれだけを見つめて、走る。





紅い瞳…。
愛しい人を思って力の限りに叫んだ。






「ノアー!!!」






何かが弾ける音が響き渡る。





歪んだ空間が純白の世界とモノクロの世界が混じり合う。





そこには恐ろしくも美しい…。
炎に包まれる骸骨がいた。





獣は歪んだ空間にある、それに気づいた…。






遠い遠い記憶の断片…。





古い古い薔薇の香り…。




彼はバンパイアに戻る。



そして、皮肉にも彼の力は…。





開放する力…。強大故に…。恐れてしまうほどの。





カチリ…。





「マセレーション…。」
紡いだ言葉が箱を開けた。




女性の悲鳴と泣き声が響いていた。
在りし日の愛した薔薇は…死の女神がそこにいた。
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