【完】 SECRET♥LOVE 危険なアイツの危険な誘惑
記憶はそこで途切れていた。
目が覚めるとそこは白い天井にどことなく消毒液の匂いがする空間だった。
「気づかれましたか? 今先生呼んできますね」
もうろうとする意識の中で医師に告げられた言葉は流産。
妊娠にすら気づいてなかった翡翠にとって赤ちゃんの存在を愛おしいと想ってあげられる時間さえなかった。
あれほど翡翠が夢見ていた男との結婚・・・そして赤ちゃん。
翡翠は一晩で何もかもを失った。
地位と名誉に走った男の裏切りで・・・
許せなかった。
憎かった。
恨んで恨んで泣いて泣いて・・・
翡翠は悟った。
愛など信じない。
愛などいらない。
そしていつか男が幸せを噛みしめている時に産れる事のなかった我が子の事を伝えようと。
それが今晩になってしまった。
それでも男と再会して、何度も男には何も告げるのはやめようと考える瞬間があった。
ふたり並んで座ったカウンターでも。
窓の外の街路樹のイルミネーションを眺めていたタクシーの中でも。
そして、男の胸の中でも・・・。
男が翡翠をまた都合のいい女にしようなどと思わなければ・・・
酷い男じゃなかったら・・・
翡翠は男との再会であの頃の感情を再確認するだけで何も告げることはなかっただろう。
男の驚いた顔が翡翠の頭から離れないでいた。