【完】 SECRET♥LOVE 危険なアイツの危険な誘惑
「赤ちゃんいるのね。私のお腹に」
止めなく流れる涙。
まだ見ぬ我が子への愛情が湧くように溢れてくる感覚を翡翠は感じていた。
翡翠の表情は母親そのものだった。
「翡翠、どうする気だ。アイツは明日結婚するんだぞ。わかってるよな」
そんな翡翠に釘を刺すのは男の役目だ。
男にも焦りがあった。
明日行われる挙式の重大さ。
日本の経済すら左右するかもしれない現実。
その局面で知ってしまった新しい命の存在も翡翠を目の前に簡単に始末しろとは言えずにいた。
「部長このことはみんなには秘密にしてください。私ちゃんと考えますから」
「当たり前だ。言えるわけないだろう。明日挙式する新郎の子供を身ごもってるなんて。ましてや神崎グループの社長。 あぁ――― 俺の頭がどうにかなりそうだ」
男は頭を両手でグシャグシャとかき乱した。
「翡翠・・・ すまない。 こうなったのも俺がアイツをお前に引き合わせたからだよな」
「私許しませんから。 部長の事もアイツの事も」
「それでいい。俺は仕事に戻るけど大人しく寝てろよ。 みんなにはストレス性の胃炎だとでも言っておくよ。 ここ最近の様子から誰も疑わないだろう」
男は寂しく笑って見せた。
都合よく翡翠を愛人として過ごしていた時は翡翠は何をしても許してくれていた。
そう思っていた。 だからか翡翠の「許さない」と言う言葉は棘となって男の胸の奥に刺さっていた。