【完】 SECRET♥LOVE 危険なアイツの危険な誘惑
男の存在がこれまで翡翠を支えてきた事実。
「翡翠?」
男は翡翠を優しく抱きしめる。いつもそばにあった温もりと匂い。
でもけして翡翠のものではない。
分かっているのに、今にも崩れ去りそうな決意の壁。
そんな翡翠でも男の腕の中で浮かんできた顔は、今にも消えてしまいそうな寂しげな琥珀の顔だった。
「部長。私たち終わりにしませんか?」
翡翠の言葉に男の腕がゆるまる。
翡翠は真っ直ぐ男の目を見ながら後ずさる。
「翡翠どうしたんだ?昨日の事なら今までだって割り切って上手くやってきただろう?」
「そのつもりでした。 」
「それならなんで・・・」
「昨日の部長は私の知らない部長でした。でも家族の前の部長が本当の部長なんですよね。私には娘さんのあの無邪気な笑顔を壊すことはできません。」
「翡翠本気なのか?」
「はい。今まで支えてくださりありがとうございました。」
翡翠の部長への想いは言葉では表されないほどの感謝の気持ちだった。
不純な不倫だったとしても、都合がよくて利用するだけの関係だったとしても、
それでも翡翠は男の存在に支えられていた。
人恋しい夜も寂しい夜も男の温もりがそばにあった。