【完】 SECRET♥LOVE 危険なアイツの危険な誘惑
「決意は変わりそうになさそうだな。」
男が見せる喪失感にも似た表情。
肩からは力が抜けて、翡翠の前でいつも魅せる凛として男はそこにはいなかった。
初めて素の男に近づけた気がした。
「翡翠、君の気持ちはわかったよ。いままでありがとう。 お礼と言ったら公私混同だが翡翠の企画前向きに検討するからこれからも仕事面で支えていってくれ」
最後まで男は優しかった。
このまま続けていけたなら男の優しさは翡翠を癒すこともあっただろう。
でもその優しさには未来に続く責任は一切存在しない。
「はい。 失礼します。」
部長室を後にした瞬間、翡翠の緊張が一気にほぐれる。
張りつめていた何かがプツンと切れて、全身から力が抜ける。
「終わったんだ・・・」
部長室に背を向けたとたん一筋の涙が零れた。
その涙は後悔から来るものなのか、安堵感から来るものなのか翡翠自体も溢れだす感情を上手く整理出来ないでいた。
ただ自分が選んだ選択が正しい選択だと信じていた。