【短編】阿呆と馬鹿の関係
首を傾げるだけのあたしの耳に、柚木の不安そうな声が聞こえた。
「俺と、別れたい?」
その声に、柚木を見直すも表情は見えなくて。
あたしは黙って、柚木を見下ろすだけ。
「だから、何か言えって」
街中の雑音に消されてしまいそうな小さな声に、胸がトクンッて音をたてた。
「だって……」
小さな小さな声。
今のあたしの精一杯。
何から言えばいいのか、わかんない。
どう言えば伝わるのかわかんない。
ゆっくりと顔をあげた柚木は、もう一度
「瀬名は、俺と別れたい?」
そう真っ直ぐに見つめた。
目を逸らし、首を左右に振った後、柚木を見つめ直した。
別れたいわけない。
そんなわけないじゃん。
ただ、ただ。
あたしでいいの?
こんなにも上手く付き合えない阿呆なあたしで、いいの?