【短編】阿呆と馬鹿の関係



フワッと上に引っ張られた体は、何の抵抗もなく持ち上げられた。


「こっち来て」


そう言いながら、あたしの手を引きさっきのゲームセンター2階へと階段をのぼる。

理解の出来なまま、その繋がれた手だけを見つめていた。


どんどんと奥へ進み、柚木が押したドアには男女のマークが書いてあった。

中は個室が2つのこじんまりした綺麗なトイレで、さっきまで煩かったゲーム機の音がエコーがかかったように聞こえる。


手洗い台に腰掛け、その前にあたしを立たせ両手を握ったままの柚木。


狭くて、薄暗いトイレ。

柚木のヒザがあたしの太ももに当たる距離。


って、なんちゅーエロイ設定なのよ!?


もしかして、外で言うのが恥ずかしいって思ってココに連れて来てくれたの?

いやいや、こっちの方が100倍恥ずかしいって。


場所の問題じゃなく、柚木って存在が恥ずかしくさせるんだよ。


「俺の事、好き?」


え!?


そんな言葉が出てくるなんて思ってもみなかったあたしは、驚いて顔をあげた。

あたしを見つめる、哀しい目に慌てて目を逸らした。


胸が苦しくなる。


そして、うん。と頷いた。


「じゃあ、別れたくない?」

うん。
そう、また頷いたんだ。


< 52 / 58 >

この作品をシェア

pagetop