【短編】阿呆と馬鹿の関係
「先輩とは、こっち引っ越して来てすぐ付き合ってん」
あ。
やっぱり元カノだったんだ。
「大阪おる時は、アホなんか普通に使っててんやん。
だけど、先輩からアホって言うなとか色々言われて。
そんな大阪弁が嫌いなんやったら、もうえぇわ!
って思って別れた」
うん、と首を縦に振ると
『だって俺、大阪生まれの大阪育ちやからな』
って笑いながら付け足した。
「俺、付き合って阿呆って言えへんようにしたん……お前が初めてやから」
「え?」
かすれた声が出たあたしを、更に強くギューッと抱きしめた。
「先輩な。別れた後、俺のツレと付き合って。
まぁ、別れても友達みたいなもん? で、よう言われててん」
「阿呆って言うなって?」
「うん。でも俺からしたら、そんなん我慢して付き合って何が楽しいねん。
って感じでな。……でも」
今まで話し続けてた柚木が急に黙った。
「でも?」
聞き返したあたしに
「今、お前の恥ずかしいって気持ち。
ちょっとわかったかも」
って笑いながら言い、抱きしめていた腕を緩め体をズラすと、あたしの目を見つめた。
柚木が笑ってる。
だから、あたしからも笑みが零れた。
今まで悩んでた事が、吹っ飛ぶくらいな自然な笑顔だと思う。
付き合うのが下手とか、上手いに拘ってたあたし、バカみたい。