【短編】阿呆と馬鹿の関係



柚木から笑みが消え、少し照れた表情を見せて


「アホって言うんを止めようって思うくらいに、お前の事、す……」


その瞬間、トイレのノブが回る音が聞こえた。


慌てたあたし達は、2つある個室のひとつに入り、鍵を閉める。


やっばー。


トイレで、見つめ合う男女が居たら絶対不審に思われるよね。


別の意味で煩い心臓は、ドックンドックンと脈打つ。

ふぅーっと静かに息を吐いたあたしが気づいた事。


柚木の片腕で包まれた体。

顔をあげると柚木のドアップ。

耳にかかる柚木の息。

微かに聞こえる柚木の胸の音。

肌で感じる柚木の体温。


こんな密室で、この体勢って。


さっきよりエロイんすけどっ!


さっき抱きしめられたのとか。

さっき柚木が言おうとしてた言葉の続きとか。


冷静になって思い出すと、まじで顔から火出そうだよっ!


つーか、心臓に悪すぎるっ!


――カタンッ
ドアの閉まる音が聞こえた。


はぁあーーー。


出て行ったぁ。


一瞬にして気の抜けたあたし。



< 56 / 58 >

この作品をシェア

pagetop