バカモンのスゝメ【短編】

「なー辻霧ぃー。今日のお前の予定はどーよ」

生倉は袴姿で自転車を漕ぎながら並んで走る辻霧に話しかけた。

「あー俺は今日は予備校の後で剣術のレッスンと座学だわ。で、夕方からバイト」

「お前もかぁ。俺もだいたい同じだなー」

二人とも朝イチからダルそうに喋る。

ちなみに二人とも受験に失敗し、滑り止めにも引っ掛からず留年して今は予備校生の身の上である。

二人の表情は違うようでも顔に書いてある言葉は一緒だ。

『あーカッタル。予備校行きたくねーなー』

と、もう誰が見ても一目で分かるぐらい油性の太マジックでデカデカと顔に書いてある。

本気で予備校が火事にでもならないかなーとか考えている顔だ。