キミがいなくなるその日まで
『マイは相変わらず死ぬ事に恐怖はないんだね』
シンの顔は驚きもせず、とても穏やかだった。
どうかな、分からない。
多分分からないから何も感じない。でも一つだけ分かるのは死んだらもう病気の事で苦しまないでいられる事ぐらい。
『俺は怖いよ。でもね前にも言ったでしょ?自分が死ぬよりマイが死ぬ方が怖いって。だからそんな事言わないでよ』
どうしてシンはこんな時でさえ自分を優先にしてくれないの?
『…………ばか』
私がポツリと漏らした言葉にシンは微笑んだ。
ばかだよ、本当に。
シンは今どんな言葉を望んでるの?
私は死なない、だから安心して?
そんな事言える訳ないじゃん。
だったらシンも死なないでよ。
私より先に死んだりしないで。
本当はそう海に向かって叫びたいのに出来ない。
だってシンも私と同じだから。
死なない、マイより先に死んだりしないよなんて、私が1番欲しい言葉を言ってはくれない。
シンは嘘をつかない、そんな人だから。
『そろそろ戻ろうか。きっとみんな心配してる』
先に立ち上がったのはシン。その細くて長い手がそっと私に差し伸べられた。
『うん』
静かな波が私達の背中を押してる、そんな風に思えた。
『洋服まだ乾いてないね』
『だから言ったじゃん』なんて、喋りながら駅へと歩いていると私の目にあるものが見えた。