キミがいなくなるその日まで



『シンっ!あれ………』

うしお浜に停まる1両の電車。それはゆっくりと動きだし、まるでスローモーションのように私達の瞳に映る。


『ノスタルジア電車だ』


前にノスタルジア電車の事をシンに聞くとそれは天国に一番近い島と言われる外国の海をイメージしてる電車だと教えてくれた。

外観は空と海のようなブルーのグラデーションで真っ赤な花畑が描かれている。期間限定で定期的に走るこの電車は幻の電車と言われているそうだ。


ノスタルジアって言葉を調べたら「故郷を懐かしむ」って意味なんだって。


天国に一番近い島と故郷。なんか意味深だよね。

それを前にシンに言ったら『みんな前世があるらしいしそれって1度死んじゃってるって事だから俺達は天国に行った事があるのかもね』って笑ってた。

 
『みんなそこから生まれて旅に出て、またそこへ帰る。そう思うと天国も悪くないよね』って。


『シン良かったね、シンが日頃……………』

誰も通る時間を知らないのに見れたのは奇跡だよ。

するとシンの目から涙が溢れた。その涙があまりに綺麗で私はギュッとその手を握る。


『夢、いっぱい叶ったね』


きっとシンにはまだ沢山の夢があると思うけど、
あのまま病院に居たら何一つ実現出来なかった。


『ありがとうマイ、本当にありがとう』

何度も何度も繰り返すシンの涙を私は手で拭った


『もう聞き飽きたって。ほら、帰るよ』

次に帰ると言ったのは私。

もう2度と訪れる事はないかもしれないけど私はこの匂いを、風を、温もりを忘れる事はないだろう。



ねぇ、シン


天国が空にあるなんて嘘だよ。

天使とか翼とか空をイメージさせるけど、

それはきっと誰かが作った空想だよ。


空なんかにあるから会いにいけない。

もっと手の届く寂しくない距離。

それだったらいつでもどこでも
大切な人に会えるのに。

恋しくて空を見上げて泣く事はないのにね。


そう思わない?



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