潮騒
酔っ払い気味の彼は、上機嫌で話を終わらせた。


一体どこまで本気で言ってんだかがわかんなくて、あたしは不貞腐れるように残り少ないビールを流し込んだ。


てか、レンとマサキが実は知り合いだとかなんて、冗談にもならないんだし。



「あー、しっかしマジで眠てぇー。」


なのにレンは、構わずソファーに体を投げた。



「ちょっと、この期に及んでさらに泊まるとかまで言い出さないでよ?!」


「良いじゃーん。」


「勘弁してよ、なら美雪のことでも行きなって!」


と、言った自分がはっとした。


話題にはしないようにと努めていたつもりだったが、思わず口を滑らせてしまったから。


やってしまった、と思ったあたしにレンは、ふっと笑った。



「俺が美雪のことどう思ってんのか、気になるー、って顔だなぁ。」


「………」


「おいおい、そんなに嫉妬すんなってー。」


茶化した彼をぺしっと叩くと、その顔は急に少し寂しげなものへと変わり、



「俺アイツのこと好きだよ。」


「…うん。」


「何かさ、こうやってる一瞬でも、いつも頭の中にいたりして。」


目を瞑ったレンの口調は、ひどく柔らかなものだった。


まるで愛しいもののことを話すように、彼は静かに言葉を手繰り寄せる。



「俺は所詮は色マクラのホストだけどさ、勝手に想ってんのは自由じゃん?」

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