潮騒
ひどく懐かしい夢を見た。


そうだ、あれはみんなで遊園地に行って、写真を撮った日のことだ。


あたしとレンは、どこに行くにもお兄ちゃんの後ろをついて回っては、周りの大人たちに怒られていたね。


レンはゆず兄のことを、本当のお兄ちゃんのように慕っていたから。



「お兄ちゃんはルカのだもん!」


「ズルイよ、ルカは女の子なんだから向こう行けよ!」


すぐにそんな喧嘩をしてしまうばかりだったあたし達に、お兄ちゃんはいつも、



「仲良くしなきゃダメでしょ!」


と、間に割って入っては、なだめてくれていた。


お兄ちゃんを挟んで両隣りに、あたしとレン。


それはずっと変わることなく、一生続くものだとさえ思っていたのに。


なのに起きてしまった、あの凄惨な事故。


共に5歳だったあたしとレンの心に傷を残すには、大きすぎる出来事だった。


いつの頃からか、レンはお兄ちゃんの遺影に向き合う度に、



「ボクが絶対、ゆずくんの仇を討ってあげるから。」


と、まるで自分自身に言い聞かせるように呟いていたけれど。


あたしはそんなレンの姿に、いつもいたたまれなくなっていた。


悲しみに暮れるすべての人の復讐心をその一身に背負ってしまったみたいな、レン。


けれど、誰がそれを責められたろう。


物言わぬお兄ちゃんはもう、記憶の中だけの人だ。

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