潮騒
心のどこかで、こうなることだって予期はしていた。


けど、でも、ずっと一緒に生きてきたレンから突き付けられた言葉は、あまりにも痛い。


それでも泣いてばかりじゃ何も始まらないから。


あたしが顔を俯かせ、必死で唇を噛み締めていると、



「…ルカ。」


マサキは宙を仰いで息を吐く。



「これが俺らの現実だ。」


「………」


「それでもお前は、俺のこと選んで後悔しねぇの?」


あたしは小さく頷いた。


握り取られた手の平があたたかくて、だからあたしは顔を上げる。



「今はダメでも、例え時間が掛かってもレンにはわかってもらえるようにするよ。」


だってこのままじゃいけないのだと誓ったから。



「レンが大事ないとこってことに変わりはないんだし。」


「………」


「だから、頑張って説得してみるよ。」


強くなりたかった。


笑って大丈夫なのだと言える人間になりたかった。


晴れ渡った空には雲ひとつない。



「別にこれが今生の別れってわけでもないんだしさ。」

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