潮騒
翌日の空は、梅雨明けと呼ぶにふさわしいほどに晴れ渡っていた。


高速に乗って3時間半。


観光情報誌で見つけたこの場所は、一面の花畑。



「すごーい、花時計って初めて見た!」


色とりどりに咲き誇る、季節の花々に彩られる。


滴る昨日の雨露さえも、それにおもむきを添えていた。



「夜はライトアップされて、また違った感じになるらしいぜ。」


この場が不似合いな彼には、やっぱりちょっと笑ってしまうけれど。


マサキは目を細め、柔らかな風に吹かれながら、



「たまには良いな、こういうとこも。」


今この瞬間、少しでも彼は、日常から解き放たれているのだろうか。


あたしは無理やり笑顔を作った。



「遊園地とか動物園も、あっちにあるって書いてたよ。」


「じゃあ、あとでそっちも行ってみるか。」


疲弊した顔を隠し、マサキもまた笑った。



「夏になったら、ここはひまわり畑になるんだって。」


何気なく言ったつもりだっただのに。


なのにあたしの言葉に、彼は今度は曖昧な顔をする。



「俺らに夏なんてくるのかな。」

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