潮騒
どういうつもりで言ったのか、マサキは呟いた後で歩を進めた。


あたしは少し遅れながらも、その後を追う。


色とりどりの花々が、風に揺れていた。


マサキはふうっ、と息を吐き、「座ろう。」と言って傍にあったベンチを指す。


腰を降ろし、煙草を咥えた彼は、



「俺、今でもチェンのこと許せねぇの。」


自嘲気味に吐き捨てられたその台詞。



「裏切られて、マジで殺してやろうって思うくらい、許せなくて。」


「………」


「アイツは俺だけじゃなく、今まで世話になってた人の金まで盗んでたんだから。」


「………」


「けどさ、そうやって復讐に燃えてる自分に、時々ぞっとするんだ。
マグマみたいなもんが内側から沸き上がってきて、やがては止められなくなりそうで。」


マサキは自らの手の平へと視線を落とす。


悲しそうな瞳だった。



「だから本当のこと言うと、チェンを見つけるのが怖ぇの。」


「………」


「見つけ出した時、本当に自分が人殺しになっちまいそうでさ。」


それは、葛藤。


一番に信頼していた仲間だからこそ、彼は迷い続けているのだ。


紙一重で、憎しみと友情をその胸に宿しながら。

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