潮騒

流星の夜に

「ルカさん、バイキングなんだからどんどん食べなきゃ勿体ないですよー。」


電話を掛けてきた相手は、美雪。


最近評判になっているイタリアン・バイキングのお店で、久しぶりに会おうという旨だった。


が、あたしに食欲なんてものはない。


それでも彼女は肉だの魚だのを盛った皿を、こちらに差し出してくる。


あれから何日が過ぎたのか、いや、もしかしたらあの出来事さえ先ほどのことだったのかもしれないが、とにかく時間の感覚なんてなくなっていた。


ただ、意識は朦朧としながらも、



「ごめんね。
でも何か、夏バテみたいで。」


あたしが適当に愛想笑いだけを返すと、彼女はため息混じりにフォークを置いた。



「ルカさん、そろそろ仕事でもした方が良いですよ。」


「………」


「趣味に没頭するも良し、気分転換のためっていうか、とにかく外に出た方が絶対に良いんですから。」


それはもう、十分すぎるくらいにわかっている。


けど、でも、マサキとのことが脳裏をかすめると、上手い返事さえも出来ない。


この現実は、どこまでがリアルなのか、と。



「いっそ女ふたり、海外旅行でもしちゃいます?」


その言葉に、あたしはまた愛想笑いだけを返した。


すると美雪は肩をすくめる仕草をし、



「レンだって心配してるんですからね。」


あたしの一番痛いとこを突かれてしまった。


今も昔も、レンの名前が出てくると、途端に反論できなくなる。

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