潮騒
日当たり良好な窓辺にいると、少しだけ眩しく感じる。


その度に、いつの間にこんなにも、夜の闇に慣れてしまったのかと思わされる。



「ねぇ、どんな夢見てたの?」


「え?」


「何か難しい顔して眠ってたから、怖い夢でも見たのかなぁ、って。」


笑い混じりで聞いてみたのに、彼は息を吐いてから窓の外へと視線を移し、



「昔のこととか、ちょっとな。」


茶化されると思っていたのに。


なのに、どこか悲しそうな顔で言われてしまうと、言葉に詰まる。



「久しぶりに親父の顔なんか思い出して、ホント最悪。」


お父さんのこと、嫌いなの?


とは、やっぱり聞けなくて、困りあぐねていると、



「まぁ、別に今更、死んだヤツのことなんてどうでも良いけどさ。」


マサキは伸びをしてから煙草を咥えた。



「なぁ、今日って仕事?」


「え、いやまだ時間は大丈夫だけど。」


じゃあ送ってくから、そのついでに何か食いに行こう、と彼は言った。


だからちょっと驚いていると、マサキはそんなあたしを無視してさっさと準備を始めてしまう。


聞くべきでないことが、どんどん増えている気がした。


こんなにもあたし達は近すぎる関係なのにね。

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