潮騒
思えば今まであたし達は、夜にしか会ったことがなかったのに。


昼間というのは、やっぱり苦手。


所詮、太陽に嫌われてしまったあたしには、陽の光なんて似合わないから。



「予報じゃ雨だとか言ってたけど、見事に晴れたな。」


乗り込んだ車の中で、マサキは眩しさに目を細めていた。



「あたし曇ってるのが一番好き。」


「何だそれ。」


「雨も、晴れも、あんまり落ち着かないんだよね。」


どうせなら、どこまでも淀んでいる世界であれば良いのに。


綺麗なものを見て自分の醜さを痛感させられるくらいなら、いっそそんなものは必要ないから。


なんて、他愛もないことを話しているうちに、喫茶店の駐車場に到着した。


裏手に車を止めたため、この寒い中で少し歩かなくてはならないらしい。


げんなりしながらマサキの後ろに続いていた時、



「あれ?
この前までこんな店なかったのにな。」


彼が足を止めたのは、喫茶店の横に出来たらしい、真新しいお店。


どうやらペットショップのようだが。



「入ってみる?」


「…えっ、ちょっ…」


けれど抵抗の意味はなく、マサキによって手を引かれた。


最悪だった。

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