人魚姫は籠の中で。
ハッと息を吐いた。
もう既に、アイロと呼ばれていた男が私の後ろに立っていたのだ。
いつの間に移動したのか。
瞬きをした、そんな短時間で。
「人魚のお姫様、我が主のご命令は絶対なんです…」
申し訳なさそうな声色を出しながらも、にこやかに微笑んで言うこの男。
先ほど、金色の瞳を持つ…美しい男から発せられた言葉は、セリティナ自身の危険を孕んでいるものだ。
しかし、彼の妖艶な雰囲気と容姿に魅入っていたセリティナは、その言葉に反応するのが遅れてしまった。
これが彼女の運命を大きく変えることになるなど思いもしなかっただろう。