人魚姫は籠の中で。
「…あ、あなたは…」
やたらニコニコしているこの男は、海岸で私の意識を奪ったやつだ。
「あっ!僕はアイロ・デリアルと申します。人魚のお姫様、貴女のお名前を伺っても宜しいですか?」
私の前に膝まずいてそう言うアイロと名乗る男は、やっぱり私を見てニコニコしてる。
「…私は、セリティナ。セリティナ・ルーベルフォード」
名前を名乗ると、目の前の男…アイロは目を少し見開いた。
私、何か変なこと言った…?
名前を言っただけだよね?
そう不思議に思い首を傾げると、今度は近くでクックッと小さく笑う声が聞こえてきて。
……えっな、何?