colors
始まりの唄
俺は幼い時に両親を失った。
それは5歳の時で、それから10年という歳月が過ぎようとしていた…
俺は兄―睦月と共に里親に引き取られた。
その里親はとても優しい夫婦だった。
でも、俺は心を閉ざした。
幼い心に父と母がいないという現実は、とても耐えきれなかった。
でも今の母さん父さんは、そんな俺に嫌な顔一つせず接してくれた。
だから今の俺がいるんだと思う。
明るくてスポーツの大好きな俺が……


今日は高校の入学式で朝から母さんが大騒ぎしていた。

「弥生~。もう制服に着替えたの~?」

「着替えた~」

母さんは化粧をしながら俺の方を見た。

「格好いいじゃない~」

そこにつかさず毒舌をする兄、

「ま、ネクタイぐちゃぐちゃだけどな」

「え?」

「ほれっ」

睦月は手際よくネクタイを結び直してくれた。
「あ、ありがと」
兄は大学2年生で20歳。
父の会社を継ぐために猛勉強をしている途中。
母さんは優しく、明るく、怒る時はホントに鬼のような人。
父さんは去年病気でこの世からいなくなってしまった。
優しくて、少し頑固で、頼りがいのある人だった。
そして俺―南弥生
女みたいな名前だが列記とした男だ。
今日は高校への入学式。
期待と不安に胸をふくらませていた。

「兄ちゃん、俺友達出来るかな?」

「うっせ~なぁ~。お前は小学生か!」

「だって、緊張するじゃん!」

「まぁ、弥生の性格なら友達もすぐ出来るんじゃねぇの」

「本当!?」

「あ~、ホント、ホント!」

睦月は俺から逃げるために洗面所へ行ってしまった。
睦月は俺が心を閉ざした時に一番近くにいてくれた人だから俺が一番信用している人でもある。
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